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「仕入れの極意。」

測るの物語 -第4回-

歩くこと。それが浜崎のポリシーだ。会社の車は意地でも使わない。徹底的に自分の足を使う。「歩くスピードって、人間にとって自然な速度なんです。車や自転車では一瞬で通り過ぎてしまう景色も、見ることができますから。身体にもいいですしね(笑)」。歩きながら彼は考える。駅から物件までの道すがら、もし自分がここに住めばどう暮らすのか。買物に行くスーパーは?子どもと遊ぶ公園は?週末に通いたいレストランは?─目当てのマンションに辿り着くと、浜崎はまず物件の顔となるエントランスを眺める。第一印象が与える影響が大きいのは、マンションも人も同じだ。次に管理体制を確認する。清掃は行き届いているか。駐輪場に乱れはないか。掲示板に不穏な情報は書き込まれていないか。図面を見るだけではわからない、住居としての本質がそこに現れる。室内の広さやそこから見える景色も重要だ。ここにはどんな家族が住むのだろう。子育てファミリーか、それとも一人暮らしの女性か。リノベーションのマジックで、どんな理想を叶えられるのか。そのように物件を吟味し、納得して仕入れられる物件は一握りだと言う。「常にそこに暮らすお客様の思いを測ること。そうしないと、いい仕入れはできませんから」。

眺望を見て、ぐっときた。浜離宮がズドンと抜ける気持ち良さ。階数も方角も申し分ない最高のビュー。それは、日比野がインテリックスに入社して『一度は取引したい』とかねてから憧れていた有名なタワーマンションだった。何度も足を運び、コツコツと築いた仲介会社との信頼関係によって紹介してもらえた希少物件。当然、価格も大きかった─いつになく鼓動が早まるほどに。だが、紛れもなくその値段に見合う価値がある。日比野はそう確信した。「もちろん、自分の思い入れだけで中古マンションを仕入れることはありません。数多くのリノベーションマンションを供給してきたインテリックスには、ファイリングされた過去の膨大な成約実例データがあります。それを調べ上げ、流通性の裏付けを取って進めます」。
リノベーションでは、空調設備や水廻り、フローリングなどを建物のグレードにふさわしく新調。しかるべき内装によって、そこに暮らす「誇り」をより深く感じてもらえるように─。
物件にはほどなく買い手がついた。圧倒的な室内からの眺望、そして上質感のある内装に惚れ込んでのご契約。それは日比野の夢と、そこで新たに暮らすオーナーの夢が重なった瞬間だった。

Illustlation : Toshimasa Yasumitsu