Intellex

挑戦と飛翔。

測るの物語 -第9回-

その男は、思いもよらないところに出没する。あるときは年の瀬でごった返す東京下町、谷中銀座の商店街に。あるときは自社の運営するホテル〈モンタン博多〉のロビーで、旅行者のように海外からのバックパッカーに交じって。そしてまたあるときは鶯谷にある元三島神社で─インテリックスの副社長・俊成誠司は、どういうわけだか町内会の人と共にハッピを着て餅つきに興じていたりするのだった。 その「神出鬼没」とも思える行動には、どうやら理由があるらしい。 「いま本当にカスタマー(顧客)が必要としているものって、なんだろう。そう考えた時に、『直接お客さまの声を聞く』とか、『直接お客さまと関わる』ということがとても大切になってくる。だからわたしは、できるだけそういった現場に足を運ぶようにしています」。 ものづくりは、お客さまの顔が見えてこそだと彼は言う。生々しい情報が行き交う場所。生活者の息づかいや体温が感じられるところにこそ、新しい商品開発のヒントや、ニーズに合ったサービスのあり方を発見する手がかりがある。 中古マンション再生流通事業を主に、リノベーションによる付加価値を提供してきたインテリックス。数多くのリノベーションで培ってきたノウハウを活かし、良質な不動産を100万円単位で取得できる「不動産小口化商品」の販売。さらに売却後も住み続けられる「リースバックサービス」の提供や、コミュニティを育むホテル&レジデンスを地方都市にオープンさせるなど、近年、カスタマーに向けた様々なサービスを発表。 「『これをやっちゃいけない』というタブーは、インテリックスにはないのかもしれない」と彼は笑う。「わたしたちはリノベーションという定義を、もっと広げたい。マンションだけではなく、あらゆる建築を含めた日本の文化において、壊さず残していかなければいけないものを引き継ぎ、リバイタライズ(再活性化)させること。それがこれからの私たちに課せられた使命じゃないかと思うんです」。 その言葉どおり、京町家を保全・継承し、宿泊施設にリノベーションした〈京町家プロジェクト〉や、この春、鶯谷にデビューした地域をリノベーションするホテル〈LANDABOUT〉など、古いものを刷新し命を吹き込む新たな事業を積極的に展開している。 「インテリックスは、常にチャレンジャー」と力強く語る俊成。2020年、新しい時代に飛翔する、新たなる挑戦はまだ始まったばかりだ。

Illustlation : Toshimasa Yasumitsu