Intellex

長い相談。

測るの物語 -第6回-

「会社からしてみれば、僕は駄目社員だと思うんです」と、大野は頭を掻きながら言うのだった。自宅等の売却により一括でまとまった資金を得て、そのまま賃借として元の家に住まい続けることが可能なインテリックスのリースバック「安住売却 あんばい」。大野は事業部の副部長として、数多くの顧客折衝を担当してきた。「愛着のある家を売る時は、だれもが高く買い取ってほしいと思うもの。しかし条件によりそれが叶わない場合もあります。ビジネスとして冷静に対応しなければならない一方、お客さんののっぴきならない事情を聞いてしまうと、会社にかけあってでも、なんとかしてあげたいと思うんです」。老後の生活資金の確保。複数のローンの返済など、自宅を手放さなければならない理由は人それぞれである。実際に話を聞きに行ってみると、そこには一言で語り尽くせない様々な人間模様があるのだと言う。突然の病気。不慮の事故。事業の失敗など想定外の経済的な苦難。「長い人だと5時間ぐらい話し込むこともあります。お茶とお茶菓子を出していただいて仕事の話は最初の1時間ぐらい。あとは、そうですね─いつのまにか人生相談になってしまうケースもめずらしくありません」。なかなか人には言えなお金の悩み。ずっと心に押しとどめていた不安や恐れが堰を切ったように溢れ出す。
「だけど、それは僕らとしてはうれしいことなんですよ。心を開いて、包み隠さずにお伝えしてもらえたことで、こちらもお客様の事情を最大限に汲んだうえでサービスの提供ができますから。結果的に成約に至らなくても、その方の現状に対して何らかのご提案ができます。たとえば弁済方法の変更や、債務の一時的な減免などの相談を金融機関に掛け合い、受け入れられれば当面の暮らしがラクになったり、それがきっかけで立ち直れることもある。会社の利益には直接結びつかないけれども、私たちのビジネスの社会的な役割を一人でも多くの方に理解してもらえることには少なからず意味がありますから」。
リースバックは、顧客の置かれた苦しい現状や想いを測り、「なんとかしてあげたい」というスタッフ一人ひとりの気持ちが結びついた商品だと話す大野。しかし、それでも自宅を手放すことに迷いがある人には、こんな話もするという。
「人生の最期を迎えるその時に、財産を残す方がいいのか、それとも自分の人生が楽しかったと心から思えるほうがいいのか。あなたはどう考えますか?苦しいこともあったけれど、それでも最期は楽しかったと思える人生のために、どうか私たちのサービスを役に立ててください」。

Illustlation : Toshimasa Yasumitsu