メニュー

君島喜美子さんの考える「豊かな暮らしと住まい」とは(後編)

2023.07.27 これからの住まい#2重サッシ#サスティナビリティ#リライフプラス#中古マンションを買ってリノベーション#中古を買ってリノベーション#断熱材

リノベーション専門誌「relife+(リライフプラス)」編集長の君島 喜美子さん(以下、君島さん)に聞く、「豊かな暮らしと住まい」。後編では、長く住宅業界に携わってきた君島さんが感じる、人々の家や暮らしに対する価値観の変化について聞いてみた。

■この10数年でがらりと変わった、日本人の住宅価値観

君島さんが編集という形で住宅業界に携わってから約16年。わたしたち日本人の住まいに対する価値観や、住まいに求めるものはどう変わってきたのだろう。

「リノベーション専門誌として『relife+』が創刊したのは2009年。そのころは『リノベーション』という言葉はまだまだ浸透しておらず、記事内には『リフォーム』という言葉をあえて入れていたくらいでした。でも、次第に『リノベーション=カッコイイ』というポジティブなイメージに変わっていって、中古住宅を購入してリノベーションをする、という選択肢が浸透してきました」

と、この10数年では「家を買うなら、新築戸建てか新築マンション」という価値観だったところに、「中古物件を買ってリノベーション」という選択肢が加わったのが大きな変化だと話す君島さん。そして、こう続けた。

「意識の変化としては、リノベーションが広まってきた初期は『ブルックリン風』や『北欧風』のような内装テーマの家づくりが多かったけれど、最近は『〇〇風は逆にイマイチ…… 』という空気を感じますね。ライフスタイルや好みの多様化によって『〇〇風』と表現しにくい住まいが増えたという一面もあります。

あと、二重サッシや断熱への意識もすごく高まって、リノベーションする方の住まいを見ているとそれらは標準化している印象です。二重サッシの設置や断熱性能の向上に対して補助金が適応されるようになったこともあって、デザインよりも暮らしやすさに直結する実用面に予算をかける方が増えてきましたね。持ち家をリノベーションした方は特に、断熱対策を行ったことで快適性が格段に上がったことを実感しやすいので、幸福感につながっていると思います。

加えて、クロスよりは塗装や珪藻土を使いたいなど、より自然素材が好まれる傾向も。SNSが普及して情報がより取りやすくなったからか、昔よりも素材や間取りなどの細かいこだわりを持った施主さんが増えたように感じます」

■これからの住まいのキーワードは「ちょい郊外」?

リノベーション業界の最前線にいる君島さんに、これからの住まいトレンドはどうなっていくのか聞いてみると「ちょい郊外」というキーワードが出てきた。「コロナ禍を経験したことによって、リモートワークという働き方が浸透し、ここ数年ではワークスペースを設ける間取りがとても増えました。仕事と家は、これからより近くなっていくと考えます。

それに関連して『ちょい郊外』という立地を選ぶ方も増加傾向です。都心じゃないけれど、都心へのアクセスが便利な都内23区やその周辺の市部とか。出勤というアクションが以前より必須でなくなったため、都心立地の優位性も少し変わったように思います」

近年は都内の不動産価格が上昇傾向にあることから、予算面も影響して都心から離れた立地で住まいを探す人も増えているのであろう。そして、「マイホーム」というキーワードに対する意識変化のお話も印象的だった。

「『マイホーム』って死語になってきた気がするんですよね。最近では『relife+』でもその言葉は使いません。『マイホーム=購入した持ち家』という定義で使われていたけれど、今はセカンドハウスを持って二拠点生活をする人や、生涯の間に何度も住み替えをする人、もちろん買わない人もいるなど、ライフスタイルや住まいへ求める要素も多様化していますし、家(ホーム)は『マイ』じゃなくなってくるのかもしれませんね」

■住まいと同じく、環境問題意識やテクノロジーも大きく変化

「変化」でいうと、住まいのほかにもこの10数年で大きく変わったことはたくさんある。たとえば、環境問題に対する人々の姿勢や意識。わたしたちの暮らしと密着している環境問題について、君島さんが普段感じていること、取り組んでいることを聞いてみた。

「ペットボトルを使わないよう、水筒を持ち歩いています。あと、お取り寄せをするなら、外食する。お取り寄せって梱包が過剰で、すごくプラゴミが出るんですよね。あと、お肉やお魚は食品トレイのゴミが出ない精肉店や鮮魚店で買い物をするようにしています。

日々買い物をしていると、プラスチック包装がすごく多いことを実感しますよね。キウイやいちごなどの衝撃に弱い果物の緩衝材とか、シャンプーや洗剤のパッケージとか。とはいえ、生活に必要なものは買うしかないので、ジレンマがあります。

そうそう、最近はお笑い芸人兼ゴミ清掃員である『マシンガンズ』滝沢さん のTwitterをよく見ているんです。汚れてるプラゴミは洗えないなら可燃ごみへ、竹串は清掃員さんがケガしやすいから何かに包んで捨てるなど、ゴミの正しい捨て方について教えてくれるので、ゴミの分別や捨て方はより気を付けるようになりましたね」

また、ITテクノロジーやオンラインサービスなどが進化したことも、この10数年での大きな変化のひとつであろう。君島さんはそれらをどう暮らしに取り入れているのだろうか。

「実は、あまり最新のテクノロジーを使った商品やサービスって使っていないんです。家電でいうと、ロボット掃除機はおろか掃除機さえもないくらい(笑) 狭い家なので、ほうきと雑巾で事足りちゃうんですよね。

使ったことはないのですが、わたしはすごくせっかちなので、何かをしているときに『音楽かけて』とか『テレビつけて』とかの指示に応えてくれるスマートスピーカーなんかはいいなと思っています。あといつも荷物が多いので、玄関の鍵がスマホで解錠できるスマートキーとか、忙しい時も受診できるオンライン診療/オンライン処方も便利そうですよね」

と、現在はアナログ派という君島さん。「それと乾燥機の『乾太くん』も欲しいな」と色々欲しいものや気になるものが挙がりはしたものの、今回お話を聞いた限りでは、なんだかすでに君島さんの暮らしは今あるもので満ち足りているようにも感じられた。

■君島さんにとっての「家」とは?

そんな君島さんに、最後の質問。あなたにとって「家」とは?

「わたしにとって家は『大切だけど、すべてじゃない』。繰り返しになりますが『家で完結しなくていい』という考え方にわたしは賛成なんです。たとえ家が狭くても、自分のパーソナルスペースがなくても、最新設備が足りていなくても、『外で補完する』という思考でいれば、家にすべてを詰め込む必要はなくなります。

家づくりを進める段階で、『完璧な家を作ろう』と意気込みすぎるのって疲れちゃいますよね。一回の家づくりで失敗なく100%の状態に仕上げるのは難しいし、気負いすぎて逆に失敗してしまうことも。足りないものを外に求めたり、ライフスタイルや家族構成に合わせてあとから住まいに手を加えることもできるから、もっと「家」に対して気軽な気持ちでもいいのではと思うんです」

そう話す君島さんの娘さんが 社会人になって独立するまであと4年弱。「居心地は悪いけど愛着はある」という今の家に住み続けるのか、それとも緑に囲まれた団地に住み替えるのか……君島さんの住まいと暮らし、そしてそこでつくり出す幸せはあと数年で変化のときを迎えそうだ。

 

<プロフィール>

君島 喜美子(きみじま きみこ)

1998年に扶桑社に入社後、「ESSE」や「皇室」編集部勤務を経て2007年より「住まいの設計」編集部に配属。現在はリノベーション専門誌「relife+」の編集長としてリノベ業界・住宅業界を盛り上げる。過去には 「リノベーション協議会」が主催する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」の選考委員も務めた。

全編を読む

『インテリックスグループのMISSION』

一人ひとりが住まいや暮らしに求める夢や想いと、めまぐるしい勢いで変化していく社会と、私たちが提供する商品・サービス・技術をつなぎ、一人ひとりに寄り添った身近な幸せのカタチをつくっていきます。
そのために、私たちは日々お客様が求めていること、社会が求めていることを測り続けます。

 

 

 

 

関連記事