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社会学者バーバラ・ホルトスさんの考える「豊かな暮らしと住まい」とは(前編)

2023.07.18 これからの住まい#2重サッシ#サスティナビリティ#セントラルヒーティング#断熱材#熱交換式換気システム

住まいや暮らしの価値観が多様化し、めまぐるしく社会の変化と技術革新が進んでいく現在。そのなかで、日々感じる暮らしの「幸せ」や「豊かさ」とは何なのかを測るために、各分野の専門家などの方々にお話を聞いていきます。

今回お話をお伺いしたのは、ドイツ日本研究所の副所長を務め、少子化問題などの家族社会学を研究しているバーバラ・ホルトスさん(以後、バーバラさん)

日本で暮らしてみて感じる、日本とドイツの住まいや暮らしに対する価値観や技術の違い、そして、バーバラさんが考える「豊かな暮らし」とは何なのかをお伺いしました。

 

■豊かな暮らしのベースは「リラックスできてクリーンな住まい」

「バーバラさんにとって“豊かな暮らし”とは?」とやや風呂敷を広げてお聞きすると、返ってきたのは「安心・安全に暮らせる家があることが大前提で、その家がリラックスできてクリーンであることも大事。居心地よく快適な家は、幸せや豊かさを感じるうえで欠かせない」というお答え。

「居心地がよく快適な家であるためには、内装が新しくきれいで、虫がいないという要素がわたしにとっては大きいです。ミニマルな空間が好きなので、ものをあまり置いていない白を基調としたシンプルな空間だと、より落ち着けます。窓から緑が見えるのもいいですよね。

また、わたしは環境配慮の面から空調も気になります。電力をたくさん消費するエアコンをつけっぱなしにするのは心が痛むので、エアコンを付けなくても暑すぎず、寒すぎず、ちょうどいい温度を保てる家がベスト。

贅沢な広い家を好む人もいるけれど、空調の観点でいうと天井が高かったり広すぎたりする家はエアコンの電力消費量が多くてエコではないので、わたしは好みません。リラックスできてくつろげる家なら狭くてもいい、と考えています」。

と話すバーバラさん。今住んでいる日本の住まいは「わたしが考える“豊かな暮らし”に必要な条件がほぼ完璧にそろっている」とのこと。

そんな、住まいの心地よさを重視しているバーバラさんに「豊かさを実感するために、家を快適に保つ以外で日々やっていることや心がけていることは?」と聞いてみると、

「休日は早く起きてベランダをきれいにお掃除したり、お散歩をしたり、お茶を飲みながら本を読んだりして穏やかなひとときを楽しんでいます。あとわたしは社会学者なので、人と会うのは大好き。友人や同僚と一緒に過ごす時間も、暮らしに豊かさをプラスしてくれます」

と、休日のゆったりとした家時間や友人と過ごす時間に「暮らしの豊かさ」を感じるとのこと。飼い猫とのんびり戯れるのも幸せな時間、とも話してくれた。

■ドイツにはない日本の住宅のいいところは「網戸」と「引き戸」

豊かな暮らしのためには心地よい家が必要。それでは、バーバラさんが日本で暮らしてみて感じる、日本の住宅のいいところや悪いところは何なのだろう。

「まず、日本に住んでみてすごくいいなと思ったのは、網戸。日本の窓には網戸が付いていることがほとんどですが、ドイツでは最近見かけるようになった程度で基本的には付いていません。網戸があると窓を開けているときも虫が入ってこないので、虫嫌いのわたしにとっては暮らしの質が高まる大きなポイントなんです。

また、窓も室内扉も日本ではスライディングドア(引き戸)が多いですよね。ドイツの窓や扉は開き戸が標準的。ドイツの安全基準では特に“引き戸の窓”を設置するのは難しいんです。

でも、開き戸の場合、窓が開いたままだと強い風のとき急に閉まって危ないですし、室内扉を開けっぱなしにすると通路をふさいでしまうし、家具を置くスペースも狭めてしまいます。

なので、今住んでいる家は全部引き戸。とても便利で快適なので、ドイツの実家にも取り入れてあげたいくらいです」

と、網戸と引き戸に魅せられたバーバラさん。逆に日本の住宅の問題点はあるか聞いてみた。

「一番の問題点は“壁が薄い”こと。日本の住宅は外壁や室内の壁がドイツに比べて薄く、隣人の生活音も聞こえやすいし、なにより断熱性能が低いです。

ドイツでは壁の厚さや断熱性能は、家選びの際にすごく重視されるポイント。なぜなら、それらは室内温度維持、つまりエネルギー消費量や電気代に大きく影響するから。ペアガラスは基本ですし、リフォーム時には断熱材を交換/追加したりと、断熱性能への意識がとても高いです。

また、日本のほとんどの住宅にはセントラルヒーティングが採用されていない点も残念に思っています。ドイツの住宅はセントラルヒーティングが一般的。常時稼働していて、24時間、快適温度が保たれています。そう聞くと電力消費量が多く感じるかもしれませんが、壁が厚くて断熱性能がしっかり保たれているので、実はエコ。

壁が薄くて断熱性能が低い日本の家では、外出先から家に帰ると、冬は寒いし、夏は暑いですよね。さらに、部屋ひとつひとつにエアコンがあって、付けたり消したりしながら使うのが基本。それはエコじゃないなと感じているので、わたしはなるべくエアコンの利用は控えて、ブランケットやこたつなどの省エネアイテムを使うようにしています」

「豊かな暮らし」のためにはリラックスできる快適な家があることがすべてのベースであり、そのうえで余暇の穏やかな家時間や友人と過ごす時間に幸せを感じているというバーバラさん。余計な電力を極力消費しないよう環境配慮をしながら、今は日本の住宅で心地よい暮らしを楽しんでいるようだった。

そんなバーバラさんが考える、暮らしへの最新テクノロジーの取り入れ方やドイツでは一般的な環境問題対策、そして日本での暮らしのなかで感じる日本の環境対策の問題点についても聞いてみた。それはまた後半で。

<プロフィール>

バーバラ・ホルトス

2006年にドイツのトリアー大学で日本学、2010年にハワイ大学で社会学の2つの博士号を取得。 その後、ウィーン大学東アジア研究学科/日本学部の助教を経て、2018年4月にドイツ日本研究所の副所長に就任。社会学を専門として少子化問題や社会変動について研究。最近では、現代日本におけるペットの社会学をテーマに研究を進めている。

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