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社会学者バーバラ・ホルトスさんの考える「豊かな暮らしと住まい」とは(後編)

2023.07.18 これからの住まい#サスティナビリティ#セントラルヒーティング#断熱材#熱交換式換気システム

ドイツ日本研究所の副所長を務める社会学者のバーバラさんに聞く「豊かな暮らし」。後編では、最新テクノロジーを暮らしにどう取り入れているか、また、環境対策先進国と言われるドイツでの企業や個人が、暮らしのなかで行っている環境問題に対する取り組みについてお伺いしてみました。

■便利なデジタルテクノロジーは必要最低限しか使わない

AI技術やデジタルテクノロジーが急速に進歩している昨今。わたしたちの暮らしのなかにもそれらの技術を活用したIoT家電や便利なサービスが増えてきた。バーバラさんの暮らしのなかにも登場しているのかと思いきや、「そういった便利家電は持っていなくて、あるのは炊飯器やポットくらい」とのこと。

「アレクサやルンバなどの便利家電は今のわたしには不要。もちろん、そういった商品やサービスがたくさんあるのは素晴らしいことだと思います。声で電化製品が操作できたり、自動で動いてくれる家電があれば、お年寄りの暮らしや介護シーンではすごく役立ちますし、必要な人にとっては重宝されることでしょう。

その反面、それらはすべて電源が必要なのも事実。もし、今電源が使えなくなったら、便利な家電やサービスはすべて使えなくなってしまいますよね。

わたしはいつも『電源がなくなったらどうするか』を考えているし、なるべく電力を使わないで暮らしたいと思っています。今のわたしは家族人数が多いわけでもないから家事の手間は限られているし、まだまだ自分の体も元気なので、自分でできることは自分でやりたいんです」

そして、便利な家電もサービスも、もちろん費用がかかる。バーバラさんは「それらを購入したり利用したりするためにお金を支払うよりも、わたしは旅行に行ったりして思い出をつくりたい」と話した。

とはいえ「あったら便利だな、より快適に暮らせるな」と思うデジタルテクノロジーはあるのかと伺ねてみると、

「いい音質の音楽が家じゅうどこにいても聴けるようになるといいな、とは思いますね。音楽が大好きで、お掃除のときも料理のときも、ずっと聞いていたいけれど、今の家は戸建てなので家の中を移動するときにいつもスマホを持ち歩かないと音楽が聴けません。

もし、人感センサーで人がいる場所を察知して音楽が追いかけてきたり、セントラルヒーティングのように家全体のスピーカー調整をリモコンひとつでできるようになったりしたら、すごくいいなと思います」

とのこと。調理時間や掃除時間を短くする、というような時短要素よりも、自分の好きなことに触れる時間がより増える方向へのデジタルテクノロジーの進化を期待するバーバラさんだった。

■自転車通勤にベジタリアンメニュー……環境問題意識が高いドイツ企業

バーバラさんのお話をお伺いしていると、やはり環境問題への意識の高さが印象的だった。ドイツ出身の方が多く勤務する今の職場では、企業としてどんな取り組みをしているのか聞いてみた。

「ドイツ日本研究所で行っている環境に配慮したアクションとしては、書類のペーパーレス化や自転車通勤の推奨など。書類は基本的にiPadなどを使ってデジタルで管理したり、読んだりしていますが、紙が必要なシーンもあります。

最近では研究所のパンフレットの印刷にベジタブルインクを使用するようにし、紙もより環境に配慮できるものを使用するようになりました。

また、ドイツ企業のなかには社員食堂でベジタリアンメニューを提供する、というアクションもみられます。工業的な工場における牛や豚などの農業が気候変動の重要な原因となっているため、また工業的な農業は倫理的に問題があるという考えもあって、ドイツでは人口の約10%がベジタリアン食を摂っているんです。

と、日本でも取り組みが進むものから、あまり日本では馴染みのないものまで、ドイツのさまざまな環境問題に対する具体的アクションを教えてくれた。最近ではドイツ日本研究所にて「サスティナビリティ賞」が設けられ、気候保護に貢献するアイデアやアクションを持つ職員に授与されるのという取り組みも始まったのだそう。

■ドイツと比べて驚いた、日本の空調管理やプラ包装

日々、環境問題への意識が高い職場で働き、自身のプライベートでも配慮を欠かさないバーバラさんに、日本の環境対策について聞いてみたところ、

「日本で暮らすなかで気になっているのは、まずスーパーやコンビニの冷蔵/冷凍ショーケースに扉がないこと。最新のショーケースではエアカーテンを作り出す性能とともに

省エネ性能も向上しているようですが、やはり完全に扉が閉まるタイプのショーケースに比べると余計な電力を消費してしまいます。

ドイツの冷蔵/冷凍ショーケースは20年くらい前には扉付きが基本になったので、日本に来てすごく驚きました。

あと、プラスチック容器や包装が多いことも気になります。だから、わたしは例えば飲み物はガラス瓶のものを購入するなど、なるべくプラスチックを消費しないよう気を付けています」とのこと。加えて、日本はお店や電車内のエアコンを効かせすぎていて、電力を使い過ぎなのではという指摘もあった。

■バーバラさんにとっての「家」とは?

最後に、バーバラさんにとって「家」とは何か、聞いてみた。

「安全で安心、一番リラックスできる場所ですね。ドイツの友人を招いて食事をしたり、ボードゲームをしながらシェアハウスみたいになったりすることもあるし、ときには仕事のミーティングプレイスになったりも。豪華で広い必要はないけれど、自分や家族、ゲストがくつろげる場所でありたいです」

そう話すバーバラさんは、今年、同居している息子さんがアメリカの大学に進学するため、今後の住まいをどうするかお悩み中だそう。家族のライフステージが変わり、仮に住まいが変わったとしても、きっとバーバラさんのご自宅はいつもスッキリと快適で、穏やかな時間が流れているのでしょう。

 

<プロフィール>

バーバラ・ホルトス

2006年にドイツのトリアー大学で日本学、2010年にハワイ大学で社会学の2つの博士号を取得。 その後、ウィーン大学東アジア研究学科/日本学部の助教を経て、2018年4月にドイツ日本研究所の副所長に就任。社会学を専門として少子化問題や社会変動について研究。最近では、現代日本におけるペットの社会学をテーマに研究を進めている。

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