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測るの物語 Vol.11

事業の樹

料理の味加減や物事の程合いを「塩梅」という。その語源となった塩と梅。食酢がない時代に代用していた梅酢と塩のバランスが程良いことを「いい塩梅」と表現していたことに由来する。インテリックスが提供する同名のサービス「あんばい(安住売却)」は、自宅を売却してもそのまま住み続けられるリースバックサービス。売却によりまとまった資金を受け取ることができ、賃貸の形で住み慣れたわが家に安心して住み続けることができる。サービスがスタートしたのは2017年。現在事業部長を務める能城(ノギ)を中心に3名のスタッフで試験的に始まった新規事業であった。当時を振り返り能城は言う。

「リースバックはまだ一般的な商品ではなく、ある会合で初めて耳にした新しいサービスでした。購入した物件は賃借人が退去後にリノベーションして売却できるので、インテリックスの事業と親和性がありそうだとは感じましたが、リスクもある。まず大手不動産会社だったら、できません。入居者様の管理や物件管理、家賃管理といった様々なハードルがあるうえに物件を売却し現金化できるのも何年先になるか分からない。─それでもこの事業には大きく育つ芽があると、社として腹をくくったことが現在につながっている」。

リノベーションする物件の先行取得によって競合会社に先んじる。それは潤沢な資金力と社会情勢を読む先見の明、そしてリスクに臆さない決断力が必要だ。リノベーションして売却することが出口のため、周辺の賃貸相場にあわせた「無理のない」賃料設定も可能となった。高齢化が進む今、老後も安心して暮らせる住居の提供という社会貢献にも寄与できる。忘れられないエピソードがある、と能城は言う。

「ある銀行のプライベートバンキング部門から紹介された富裕層の方のお話です。奥様を亡くされたその方は鎌倉の屋敷にお一人暮らし。思い出の品がたくさんあるその家を離れたくないが、手元資金も乏しくなってきたという理由で『あんばい』を利用されました。契約当日は私どものためにシャンパンまで開けてくれるような粋な方でした。その方から先日、御礼とともに自宅を離れて施設に移る決断をしたという連絡をいただいた。契約から約2年半─人生の第3コーナーを曲がろうとする方に併走し、納得いくまで愛着のある住まいに暮らしながら充実した毎日を送る手助けができました」。

安心して売却できるから「あんばい」。長い老後を自宅でいい塩梅に暮らせるから「あんばい」。利益と社会貢献を両立する絶妙な「あんばい」。人生100年時代を見すえたサービスは順調に成長し、いまインテリックスの新たな事業の柱のひとつとなろうとしている。

Illustlation : Toshimasa Yasumitsu