今回の事例は、100㎡超という広さを備えた築年数34年のマンションリノベーション。延床面積をいかした、ゆとりのプランニングをご紹介します。

「築年数は古いものの、利便性の高い立地、そして100㎡超という広さがこのマンションの大きな特長ですね」と話すインテリックス空間設計の担当者。今回ご紹介するリノベーションマンションは、神奈川県藤沢市にある築34年の物件。小田急電鉄・相模鉄道・横浜市営地下鉄の「湘南台」駅から徒歩2分、東南角部屋に位置する100㎡超というスペックを備えた、ファミリータイプの広いマンションです。

とはいえ、以前のオーナーよってすでに「1ＬＤＫ」にリノベーションされていた当物件。今回のプランニングは、まずこのマンションの一室をスケルトンリノベーションによってリセットし、「住居としていかに再構築するか？」ということころからスタートしました。

まずはこの広さをどう活かすか。担当者はこう話します。「70㎡以上の延床面積がある場合、ファミリー層をターゲットとした間取りにするのが一般的です。例外として、都心部ではセカンドハウスとして使えるよう広めの2LDKとすることもありますが、今回の立地ポジションは神奈川県の郊外都市。想定したのは横浜エリアに通勤していて、お子さんが1人〜2人いるご家族。そんな方々が暮らしにゆとりを感じられる開放的な3ＬＤＫの住まいをつくることにしました」。

プランニングにあたっては、まずLDKを陽当たりが良く、バルコニーともつながる南側に設定。そして、3つの洋室を東側に割り振りました。東向きの窓からは、どの部屋にも朝日が入り心地よい目覚めを誘います。

【Before】　リノベーション前のLDK。築30年余の古さと閉塞感を否めない空間。

「100㎡超という特長のある物件ですから、その広さや開放感を実感できるプランにしたかったんです」と担当者の言うように、LDKは24帖超を確保。3部屋の洋室も6帖〜8.5帖とゆとりのある間取りです。

収納に関してもすべての洋室にウォークインクローゼットを完備。エントランスには幅1.5メートル・天井までの高さがある下足入れを。そして廊下の物入もゴルフバック等がラクに収納できる広さを備えるなど、面積を活かした収納を各所にプランニングしています。

しかし、リノベーションには困難もありました。建築当初から備え付けの電気温水器が室内に設置されてあったことや、配管の関係でキッチンの位置を動かすことができなかったこと。プランニングの制約はけして少なくありませんでした。さらには、LDKの天井中央を渡る大きな「梁」も、圧迫感を禁じ得ない存在……。古いマンションの構造体だから致し方ないとはいえ、リノベーションのプロとしてはそこが腕の見せどころ。

「梁に間接照明を仕込み、陰影の演出によって重たさを感じさせない造作としました。天井の照明をダウンライトにしたのは、上部をフラットにすることで、すっきりと見えるように。キッチンに立ったときも視線が窓の外へ抜けるように、あえて吊り戸棚を設けていません。与えられた条件のなかでより快適なリノベーションを施すのが私たちの役割ですから」。様々な苦難を乗り越え100㎡超のマンションは、視覚効果による演出でより伸びやかで心地よい空間に生まれ変わりました。

【リビング】明るい光の差し込む、約24帖の開放的なLDK。この広さが100㎡超！

【リビング】吊り戸棚を設けず、心地よい開放感を演出したキッチン。視線が抜け、空間が広く感じられる。

【洋室】各洋室には、ゆったりとしたウォークインクローゼットを採用。衣類や日用品もすっきり収納できる。

【リビング】天井に仕込んだ間接照明が、梁の存在感を薄め、より広がりのある空間を演出。

【リビング】空間をすっきり見せるダウンライトを採用したダイニング。タイル貼の壁面も上質感のある設え。

【浴室】疲れを癒すリラックス空間として、ゆっくりと足を伸ばせる1416サイズの浴室。

【玄関】エントランスには、収納力のある天井までの高さの大型のシューズクロークを採用。すっきりと片付く。